学校を卒業して、農業機械のメーカーに就職し、5年間お世話になった。
たまたま川でコイを釣る趣味が合って、その会社の会長と釣りをする仲になり、
「釣り倶楽部」という会ができた。
朝早くまたは夕方、千曲川でコイを釣る。
僕はあまり釣れなかったが、会長は50センチオーバーのコイを本当に釣る。
「釣りバカ日誌」と違う点は、釣りでも立場が逆転しないこと。
僕が結婚してからは、気を使ったのか活動は飲み会が中心となった。
会長の釣りは続いていたが。
新入社員の僕に、様々な話をしてくれた。
釣りの話は冒頭だけで、ほとんどは全く別の話しだった。
次第に「釣り倶楽部」とはただのきっかけで、
会長が話をしたい時や、飲んで発散したい時(経営者としてのストレス?)、
僕や部員に何かあった時に、声をかけられて集まるようになった。
会長は2代目で、僕も経営者の長男だった。
会長はそのことを知らなかったのに、「釣り倶楽部」の中で、
自然と会社を動かすことについて学ばせてくれた。
家の事情を話し、会社を辞めた後も「釣り倶楽部」の一員でいさせてくれた。
きっかけを作っては、飲み会に誘ってくれた。
最後の飲み会から1ヵ月後、会長が突然亡くなった。
適当に選んで入った会社で会長と会い、たくさんのことを教わった。
今の僕につながれるように。
僕の人生で、会うと決まっていた人だと思う。
最後は80センチのコイを釣り上げ、釣り場で倒れていたという。
会長のご冥福をお祈り致します。
ありがとうございました。
僕は会長が好きで、会長も僕が嫌いではなかったと思う。
不思議な縁。
心の支えの1つがなくなり、久しぶりに泣いた。